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そこにあることはわかってた

今年の夏も暑いですね。毎日暑い日が続いています。
そんな炎天下の中、汗まみれで仕事をしていると思い出すシーンがあります。

人は極限状態になると、普段使わない感覚が研ぎ澄まされるというエピソードです。

わたしが20代半ば、時は1990年代後半です。
当時、わたしは福岡市博多区の会社でお客様先へ訪問する営業の仕事をしておりました。

移動手段は自転車。
駐車場をさがす必要もなく、渋滞の影響もうけないのでなかなか快適でした。
とはいえそれは、あくまでも近場に限った話です。
(車の運転ができなかったという事情もありますが、それはまた別の話)

夏のある日、10km以上離れた隣町のお得意先様のところにお伺いすることになりました。
電車やバスで行くにも不便な場所だったため、若者だった私はなんとかなるだろうと自転車で向かうことに。

炎天下の中、真夏にスーツ姿で自転車をこぐと、まるでゲリラ豪雨をくぐり抜けてきたかのように汗が出ます。少し考えたらわかることです。無謀でした。

途中、銀行に立ち寄り、振り込まれたばかりの給料をやや多めに引き出しました。
ちょうどいい休憩にもなり、よし、あと半分だ!と気持ちを新たに出発です。

7kmくらい走ったところでしょうか。
持参していた水分もとっくになくなっており、喉がカラッカラです。
水…。
自販機があったらなんか買おう。
ゴソゴソ。
あれ?
財布がない…。
ポケット、カバン、カゴ、どこを探してもない。
来た道をしばらく引き返してみましたが、まったく落ちている気配がありません。
やばい…。やってしまった…。
しかも今日の財布は、おろしたての大金が入っています。
「どうかどうかいい人が拾ってくれていますように…」
青ざめた顔でそう祈るしかありませんでした。
とにかくお客様との約束の時間もあるし、先へ進まなきゃいけません。

思い出しただけで気分が滅入ってきました…。
ヘビーな前置きはこのくらいにして、今回の話の本題に入ります。

お客様のところに近づくにつれて、どんどん田舎道になりました。
コンビニも見当たりません。
もしあったとしても1円も持っていないわけですからどうせ何も買えません。
スマホ決済などない時代です。そもそもスマホがない時代です。

水なんていつでもどこでも好きなときに買えると思っていました。

公園も図書館や体育館のような公共施設もなく、ぽつぽつと民家があるだけ。
最悪の場合、どこかの民家のチャイムを鳴らして、「み、水を…」とお願いするしかなさそうです。
でも想像しただけで恥ずかしい。とはいえ生命に関わるレベルなら恥ずかしがっている場合じゃない。3軒お願いすれば1軒くらいは気持ちよく恵んでくださるだろう…。でも民家は最後の手段と考えよう…。何か方法はないかな…。

飲めないとわかると余計に喉は乾くものです。
水が恋しくて恋しくてたまりません。
セミのワンワンとした大合唱が頭の中まで鳴り響いています。
太陽と道路からの照り返しでここはもう砂漠と同じ。
もう限界に近い状態です。これはもう最後の手段、民家をたよるしかない…。

そのときでした。
向こうの方に2つ並んでいる自販機が見えました。
自販機があったとしても入れるお金がない訳ですから、そんなものを見つけても無意味のはずです。
しかしそのときの私にはなぜか分かったんです。
私はその自販機の方に近づいていきました。
自転車を止め、自販機の下をのぞきます。

「ほらね」

100円が落ちていました。
そのときわたしには、「うわ!ほんとにあった!」というような驚きの感情はまったくありませんでした。

なぜなら下をのぞく前から、
そこに100円があることはわかっていた』からです。

生命の危機を感じると、人は隠されていた能力が発動するようです。
というお話でした。

そもそも財布さえ落としてなければ、自販機の中に入っているジュース、丸ごとでも買えたんですけどね…。

今回は窮地に追い込まれたおかげで何かしらの感覚が研ぎ澄まされたんでしょうけど、別に生命の危機まで追い込まなくても、頭の中でイメージを鮮明に描けたものは実現しやすいってことなんでしょうか…。

であるのであれば、わたしも仕事で何か大きなことを成し遂げたときに、「ほらね」と小さくつぶやけるくらい先にイメージを作り上げたいと思います。

今はまだ、「え?ほんとに成し遂げたの?自分がいちばんびっくりした!ね、ね、すごくない?」と大騒ぎするレベルですから。

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