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写真家になった日

「資格」や「免許」が不要な肩書は、とりあえず名乗ってしまえばいい。
そんなアドバイスをよく聞きます。
名刺に、たとえば『経営コンサルタント』とか『WEBライター』って書いてしまった方が本人の覚悟も生まれるし、周りの人もそのつもりで接してくれるので、成長するみたいです。肩書が人をつくる、って言いますし。

 

とはいえ、なかなかそれがむずかしい……。
経験も実績も少なく自信もないのに、いくら資格や免許がなくてもいいとはいえ、『写真家』とか『作家』とか『イラストレーター』って軽々しく名乗れないですよね。
畏れ多いし、そもそもそんな生易しいものじゃないって分かっているからです。
 
でも、いつかは「写真家」って名乗ってみたいという願望もある。
では、どうなったら名乗れるのか。
せめて、この3つの中のどれかを経験できたとき、名乗るきっかけにできると決めていました。
 
1.何かの賞を獲る。
2.自分のことを知らない人から、その肩書で呼んでもらえるようになる。
3.10年くらい続けて活動をしていて、お金を払ってもらえるくらい誰かの役に立つレベルになっている。
 
なかなか道は遠そうです。
わたしのような未熟者は、経験値を増やすしかありません。
ということで、先週も小さな駅前で街撮りをしていました。
時間は30分。(駅前の駐車場が最初の30分は無料だったため)
 
線路をまたぐ歩道橋にのぼり、駅のホームで待つ人などを撮りますが、たいしていい写真は撮れません。まあこんなものです。
移動をしようと歩道橋の階段へ向かいました。
夕日でオレンジ色に染まった西の空。
ファインダーをのぞきながらいい角度を探していると、道の向かい側の2階建ての窓の向こうでおじさんが何か飲んでいるような姿が見えました。
思わずそっちにレンズを向けシャッターを押したくなりましたが、盗撮していると思われるといけないのでなんとか我慢しました。
マナーは守らなきゃいけませんもんね。
 
階段を降り、駅前の広場の方へ行ってみました。
青いイルミネーションが点灯されており、あと2ヶ月もすれば12月なんだなと気付かされます。
青い灯りを前ボケに使ってみたり、背景の玉ボケにしてみたりといろいろと試しながら15分ほど経過。
カメラの背面モニターで確認をしても、またもやいい写真は撮れてません。
まあこんなもんです。
さて、駐車場が有料になる前に帰ろう。
 
車の方へ歩いていると、頭の上から声が聞こえました。
 
「おーい兄ちゃん、写真撮ってくれんね」
見上げると、さっきの2階の窓のおじさん2人がワイングラスを持って差し出していました。
びっくりしましたが、こんないい被写体はなかなかありません!
「撮ってもいいんですか?」
 


 
※ 写真掲載は許可をいただいてますが、やや小さめの表示にしています。

 

 

「ちょっと上がっておいで」とおじさんが言いました。

 
やばい……。
きっと怒られる……。
さっき階段から俺たちを撮っただろう?と質問されるに違いない……。
行くのは断ろう……、いやでもちゃんと謝れば大丈夫だろう……、そもそも撮ってはないんだし。
 
「そこから登ってこれるから、おいで」
「わかりました。ではちょっとだけおじゃまします」
と言ってわたしは覚悟を決めて階段をのぼりました。

そこにはやや南国のような雰囲気のする部屋があり、おじさんが3人すわって食事をしながらお酒を飲んであります。

「ここに座らんね、靴はぬがずにそのままよかよ」と窓から声をかけてくれたおじさんがソファー席の隣を指さしました。
「では失礼します」
 
隣に座ったわたしにおじさんは話かけました。
「あなたは写真を撮る人?」
「ええ、まあ趣味レベルですけど。仕事の合間や終わったあとに時間があれば街なんかを撮っています」
わたしは、『決して盗撮目的でカメラを持ち歩いているわけではありませんアピール』をしました。
「ほう、ええこっちゃ」
わたしは、そろそろ「撮った写真を見せて」と言われるだろうと思って心の準備をしていました。
しかし、おじさんは「ほんとええこっちゃ」と何度も口に出しておられるだけで、最後まで写真を見せてとは言いませんでした。
 

「まあ、一杯どうぞ。電車でしょ?あ、車ね? じゃあ飲まれないね。酒くらいならいくらでも飲ませてあげれるんだけどね。じゃあコレでも食べて」とみかんをくれました。

目の前のテーブルにはカセットコンロが置いてあり、フライパンの上でシャケがジューっと音を立てています。
 

「わたしはこっちの人間じゃなくてね、親類関係の用事でここに1週間くらい来とるんだよ」
みかんをほおばりながら、「そうなんですね」とわたしは答えました。

「今度、みかん畑を撮ってくれない?みんな喜ぶから」
さっき一緒に窓から顔を出しておられたもう一人のおじさんが、
「このあたりはみかんの産地やけんね」と合の手を入れるかのように付け加えました。
「山川みかんでしたっけ?」とわたしが尋ねると、
「そうそう」と2人のおじさんが嬉しそうに笑いました。
 
目の前に座っていた3人目のおじさんは、一言もしゃべらずにテレビでソフトバンクホークスVSオリックスバファローズのクライマックスシリーズを見ておられます。
 
このお三方、なんか怖い人ではないような気がする。
 

15分くらい経ったころ、
「あなたの携帯の番号を教えといてよ。ワン切りしておくから」
と言われ、わたしは番号を言いました。
当然、おじさんの番号もわたしの携帯電話に残っています。

「携帯に名前を登録するにはどうしたらいいとかな?」
とおじさんが携帯をわたしに見せます。
「ここを押すと名前が登録できるようです。わたしの名前は……」
「いいよ、名前は今度おしえてね。とりあえず、こう登録しておこう」
と言いながらおじさんは携帯電話を何やら操作しておられました。

撮った写真も確認しない、名前も2度目でいい、そんなおじさんの紳士的な対応に、わたしは感心していました。
(怖い人かもと疑ってごめんなさい)

「じゃあ、最後、記念に撮ってくれんかな」とおじさん。
 
※ 部屋が薄暗くなっていてノイズがたくさん出ている写真になってしまいました……。(未熟)
 

 

「じゃあまたね。あなたの番号はこうやって登録しておいたからね。またいつか電話でもしてね」

そういいながらおじさんが差し出した携帯電話の画面を見ると、わたしの電話番号の隣には「写真家」と書かれていました。
 
この瞬間、名前も知らないおじさんのおかげで、
わたしは「写真家」と名乗れる条件をみたしたのです。
 

ありがとう、名前も知らないおじさん。

みかん畑を撮りに行かなきゃ。
近いうちにおじさんに電話をしてみよう。

2 Responses to 写真家になった日

  • 二人で庭でBBQしてたら
    かけてたBGMの声があっきーに似てるねなんて話ながら、とっくんから
    あきのりのブログ相変わらずおもしろかったと言われて覗いてみました☺️
    あっきーらしさがでてて背景も鮮明につたわって小説をよんでるみたいでした
    写真家🤗さん
    元気そうね
    会いたいね🎵

  • あみさん、コメントありがとうございます。
    この場所にコメントくれるあみさんって誰だ?と思ったけど、内容読んだらすぐ分かりました。
    ほめていただき光栄です!
    とっくんにも、ありがとうと伝えておいてください(^o^)
    友人に読まれるのは照れ臭いけど、またなんか書きます。
    また会いましょう〜🎵

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