3連休にたまった書類関係の仕事を片付けようと、家でパソコンを開きました。
ラジオっぽい何かを聞きながら作業をしようと開いたYouTube。
おすすめ動画に、「もしわたしが50代に戻れたら絶対にすること」という樹木希林さんのサムネイルが出てきて、自分にとって大事なことが語られているような気がしてクリックしました。
昔、樹木希林さんがラジオか講演でしゃべっていた内容を誰かがまとめた切り抜き動画なのかな〜と思いながら耳をかたむけていると、どんどんその内容に引き込まれていきます。
『50代というのは、前に進まなければいけないというような焦りと、どこかで立ち止まりたい気持ちが混ざるんです。(略)』
うんうん、たしかに。なんか自分もずっと焦ってる。
『そんなに急がなくても大丈夫なんです。桜だって少し遅れて咲くことだってある。花は急がないのにちゃんと美しいんです(略)』
心が軽くなりました。
こんな話が20分くらい続き、すごくいい話を聞けたなーと思っていると、また別の樹木希林さんの動画がおすすめであがってきました。
【まだ間に合います 1年後にあなたの人生が激変する10の習慣】
こんなに歩みの遅いわたしでも——まだ間に合うんですね?
動画の中ではまず、こんな話から始まりました。
朝、少しでいいから光を感じること。
部屋の空気を少しだけ入れ替えること。
今までもどこかで読んだり聞いたりしていたことかもしれないけれど、樹木希林さんが言うと自然に心に入ってくるなぁ、としみじみしていました。
最後に語られていたのは、過去の自分に「ありがとう」と言ってあげる習慣。
『今のあなたが立っているこの場所は、振り返れば、あの頃のあなたが必死に歩いた足跡の先なんです。(略)』
知らずに目からあたたかいものが流れました。
本当にいい話だったなーと思い、ノートに樹木希林さん直伝の教えを書きました。
今日からこれを習慣にして、1年後激変してやろう——そう思いながらコメント欄を読んでいると、みんなの感謝の言葉であふれていました。
「樹木希林さん、ありがとう!」
「未来が明るくなりました」
「今日からゆっくり変化していきます」
コメント欄の温かい言葉に、自分の心もじんわり満たされていきました。
「自分も激変できるようにがんばろう」なんて思いながら、さらに下の方まで読み進めたとき--
「え!?」と声が出ました。
[これAIらしいです]
というコメントが目に入ったからです。
つまり、その声は樹木希林さんではなく、AIが作った“偽物の声”だったということでした。
これニセモノ?
あんなに心に染みていたのに、ご本人が話していないと分かった瞬間、さっきまであった丸くて温かいものがすーっと消えてしまいました。
潤っていた心が、一瞬で乾いていくってあるんだなあ。あの20分(いや、40分?)は、いったい何だったんだろう……。
百歩譲ってAIの声でもいいから、せめて、ご本人の本やインタビューなんかの言葉をもとに作られた話であってほしいんだけど。
だまされてしまった!だけで終わらないように、振り返ってみました。
この経験から学んだことはふたつあります。
ひとつめは、それを『誰が』しゃべっているかが重要だということ。
内容が同じでも、人は「誰が言ったか」で受け取り方がまるで変わってしまうんだなーと実感しました。
「誰が」というのは、「どんな生き方をしてきた人が」「どんな思いで話しているのか」、そういう背景のことなんでしょうね。
(たしかに、わたしがいくらエラそうにアドバイスしても、うちの奥さんにはまったく響いていません)
もうひとつは、相手に「だまされた」と後になって思わせてしまうようなことは、最初からちゃんと明かしておくこと。
「これはAIで生成した音声です」と書いてあったら、むしろ「ありがとうAIさん!」と感謝していたはずです。
裏切られたと思うと、感動した分だけモヤモヤも大きい。
【1年後に激変する10の方法】というタイトルを全力でクリックした自分が、なんだか少し切なくて、思わず苦笑いしてしまいます。こんな手っ取り早いビジネス書みたいなタイトルで樹木希林さんがお話されるはずなんかないよね……と今となればわかります。
それでも、樹木希林さんが本当に伝えたかった言葉として受け取り、小さな習慣を続けてみようと思います。
激変しますように。
追伸 このあと樹木希林さんの本を買いました。
