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埼玉県警から電話がかかってきた~詐欺師のほうが驚いた話~

最近、「警察」や「銀行」を名乗る詐欺電話が増えています。
ある日、私のもとに“埼玉県警”を名乗る電話がかかってきました。
最初は完全に疑っていたのですが――気づけば一時間が経過。

 

「埼玉県警です」と名乗る電話がかかってきた

仕事の移動中、休憩で立ち寄ったコンビニの駐車場についたとたん、電話が鳴りました。
「埼玉県警のサイトウと申します。永松さんのお電話でしょうか」

埼玉県警?
「最近、落とし物や失くされたものはございませんか?」
「しょっちゅうありますけど」
「その中に財布は?」
「2ヶ月に1度は置き忘れてます」

別にちゃかしてる訳ではなく、事実を述べただけです。
このとき、私は完全にこの電話を疑ってました。(疑い度数…100%)
埼玉県警から落とし物の電話なんて来るはずがない。
しかも着信番号の頭に「+」が付いてた時点で、国際電話だろうと思ったんです。
(下3桁の電話番号は110でした。とても芸が細かい!)

「キャッシュカードやクレジットカードは入ってましたか?」
「はい、入ってますよ」
どのタイミングで切ろうかなと思いながら、軽く答えてました。
仕事がら、知らない番号でも全部出るようにしているため、非通知であれ、『+』付きの着信番号であれ、とりあえず電話には出ることにしているのです。

「楽天銀行のカードはお持ちですか?」

「具体的にお聞きいたします。楽天銀行のキャッシュカードはお持ちではないですか?」
「持ってます。もうほとんど使ってませんけど」
「本当にお手もとにございますか?」
「ありますよ」と言いながら財布を確認すると―――ない。どこにも。

どうしてこの人、私がカードをなくしてるって知ってるんだろう。
「あると思ってましたが、ないです」と答えを訂正しました。
「ネットに入れますか?自分の口座にログインできますか?」
的確な指示である。
カードがなかったら次に確認するのは、口座の残高がおかしくないかどうか。
私の口座の中身を心配してくれてる感じがしました。

言われるまま確認すると、「24ヶ月間、この口座の取り引き履歴はありません」と表示されてました。
「なるほど。そのカード自体ではなく、コピーかもしれませんね」
サイトウさんは独り言のように言いました。
このときに私はこのセリフのおかしさに気が付くべきだったんです。
しかし、妙に現実味のある口調だったため話は次の段階へと流れていきました。(疑い度数…85%)

「永松さん、本題に入らせていただきます。今、周りに第三者はいらっしゃいますか?」
「車の中です。一人です」
「本日、埼玉県警に来て事情聴取をお願いしたいのですが」
「ここ福岡ですよ。行けません」
「では電話で行います。一時間から二時間ほどかかりますがよろしいですか」

(どうせ途中で切るだろう)と思いながら了承しました。

「あなたはマネーロンダリング事件の容疑者です」

「<カワモトケイタ マネーロンダリング事件>という捜査本部が立ち上がっています。
主犯宅から4000枚のカードが見つかり、その中に永松さんの名義のものがありました」

え?何それ。作り話だよね……。
でも実際にサイトウさんと名乗る人は私の楽天銀行のキャッシュカードがないことを知ってるわけだし……。

財布を拾った人の中に、カードだけ抜いて、それを詐欺グループに売った人がいたのかもしれない。
そう思うと、一気に不気味さが広がっていきました。(疑い度数…75%)

「永松さんは重要な容疑者となっております」
「容疑者?ハハハ、それはびっくりですね〜」と笑ってみましたが、サイトウさんは完全に無反応。
必要なことしか言わない。冷静すぎて本物の警察っぽくてゾクっとしました。(疑い度数…60%)

LINEで事情聴取?

「これから捜査二課の担当に代わります。主犯のカワモトケイタはLINEを使ってグループ内の連絡を取っていました。これからLINEの信号をテストする必要があります。今からLINEを使って通話できますか?」

信号テスト? なんであれ警察がLINEを使って通話をするわけがない。(疑い度数…90%)
でも、相手が私のカードを持ってるなら、その経緯を確かめたい――そんな探偵ごころが騒ぎました。

言われたIDをLINEで検索すると「捜査二課」というアカウントが出てきました。
ビデオ通話をつなぐと、警察の制服姿の男性が映ります。
「埼玉県警捜査二課のタナカです。手帳をお見せします」

画面には手帳とバッジのようなものが映っています。
そのあと通話は音声だけに変わり、事情聴取が始まりました。

「あなたの口座の残高を教えてください」

「カワモトはこう供述しています。
楽天銀行キャッシュカードを譲り受ける代わりに50万円を永松さんに渡したと。事実ですか?」
「事実ではありません」

◾️主な口座は?
◾️その残高は?
◾️振り込みの記帳は?
◾️他の口座の残高は?
◾️株は持ってる?
◾️タンス預金は?

私が答える金額が少額すぎるせいか、質問が次々にエスカレートしていきました。
あまりにもいろいろと聞いてくるので、「そんなことを聞かれても答えられませんが」と答えると、
「物的証拠がある以上、あなたは重要な容疑者という立場であると警察は認識しています。あなたが潔白であることを証明するためには、法的に通用する資産表を作成する必要があります」と言われました。
「その書類は、検事が作る必要があります。検事は通常忙しい立場ですからすぐには連絡はとれません。しかしこの捜査本部を立ち上げてますから検事とも協力体制をとっています。今、時間がとれる検事がいるか確認します。」
1分間の保留音のあと、「ひとり見つかりました。書類を作成しますのでお待ちください」と続きます。
なんかだんだんと茶番劇のように思えてきました。

本物の警察に電話してみたら

書類作成しているという待ち時間に、私は車を出て別のスマホで埼玉県警の番号を検索して電話してみました。
「あの、今、そちら、埼玉県警からマネーロンダリング事件で事情聴取中なんですが、本物ですか?」
「それ、詐欺です。すぐ切ってください」
(疑い度数…200% 詐欺確定)

車に戻ると、スマホ画面から叫ぶ声。
「もしもーし。もしもーし。法的に通用する資金管理表の書類ができました。今、ファイルを送ります。それを読み上げてください!」
細かい文字と埼玉県警の印鑑が入った書類が送られてきました。
もう1時間以上経ってました。

豹変するタナカさん

もうそろそろ仕事に戻らなくては。
たぶん、このまま続けても楽天銀行のキャッシュカードがなぜ相手側にあるのかを知ることは不可能な気がしました。
「なんか電波が…とぎれ…とぎれ…」と演技してみました。
「もしもし?聞こえてますか?」
「とぎ…れ…」
すると、相手の声が豹変しました。
「あのね、そんなわざとらしい演技しなくていいから」

通話が切れ、またかかってきます。
あの豹変後の声、こわい……。
もうあの声を浴びたくない……。
着信を切ったと同時に再び鳴るのです。
5、6回繰り返してようやくブロック。
捜査二課のタナカさんは折り返しの反射神経がすごかった。

“覚書”をスクショしようとした瞬間、画面からそれが消えました。
相手が一枚上だった。
やはりタナカさんの反射神経はすごい。

数日後、引き出しの中から出てきたもの

数日後、机の引き出しを整理していたら――
楽天銀行のキャッシュカードが出てきました。

詐欺グループが持ってると思っていたカードが、家の中にあったんです。

あの電話で「楽天銀行のカード、本当にお手元にありますか?」と聞いてきたサイトウさん。
まさか本当にビンゴだとは思ってなかったでしょう。
きっと、いちばん驚いていたのは私じゃなく、サイトウさんの方かもしれません。

おそらく彼のシナリオでは、
「カード?ありますよ」という答えを想定してたはずです。
だからあの違和感のあるセリフ――
「そのカード自体ではなく、コピーかもしれませんね」
が出たと思われます。
このセリフは、「カードは私の手元にあります」、という場合の答えのはずです。
本当に「ないです」という、まさかのビンゴすぎる回答だったため、サイトウさんは臨機応変にセリフを変更することができず、マニュアル通りのセリフを使ってしまったに違いありません。名探偵コナンくんだったらこのセリフを聞いた瞬間に、今あなたはミスを犯しましたね、と言えてるはすです。
しかし、サイトウさんはこのセリフ以外は本当に警察っぽかったです。お見事な演技でした。

『本当にカードをなくしてた(と思っていた)私』と、
『まさか本当にないとは思わなかった詐欺師』が作り出した約1時間の茶番劇は、このときに完全に幕を閉じました。

今回は事なき終えましたが、もし違う状況だったらと思うと少し怖くもあります。
詐欺の手口は年々巧妙になっています。
詐欺でお金を取られる人をなくしたい!

この体験が、誰かが「おかしいな」と気づくきっかけになればうれしいです。