「スタバ」「エゴサ」「クレカ」に「なる早」。
日常的に使われる長い単語や名前は、絶対に3文字か4文字に略さなきゃダメだってルールでもできたみたいに、略語は身近な存在になってますね。
「スクリーンショット? あ、スクショのことですか?」
略語の方じゃないと意味が伝わらないっていう逆転現象も起こったりします。
日常にすっかり定着してしまった略語もたくさんあります。
「ワリカン」「チューハイ」「ミーハー」「食パン」「切手」などなど。
挨拶も親しくなると短くなりますね。
「あざす」(軽めのありがとうございます)
「ザス!!」(気合い入れておはようございます:主に朝礼で使用)
「チース」(チャラめのキャラが使うこんにちは)
「ごめ」(軽めのごめんなさい)
「もはん」(長尾にごめんなさいというとき)
なんの略語か知らずに、間違った使い方をしていたものもあります。
「断トツ1位」って、「頭痛が痛い」と同じ二重表現ってやつになるそうです。
「断トツでトップですよ」って今まで平気で使ってたような気がする……。
略語にまつわる話になると、忘れらなれい思い出があります。
20代のころ、仕事で工事部の段取りを調整するという役割をしていたことがありました。
現場を回っている工事部の方たちに電話をして、
「急ぎの対応希望の連絡が入ったんですが、今からここに行けますか?」
と聞いたり、逆に工事部の方から、
「トラブルがあってここが長引きそうなんで、次の現場、他の人行ってもらえませんか?」
というような連絡が入ったりして、それを調整するような役割です。
ある日、工事部のIくんから電話がかかってきました。
「今の現場で手持ちにない材料が必要になったんで、今から買いに行っていいっすか?」
という連絡でした。
「いいですよ。近くにその材料売ってる店ある?」
「ありますあります。車で10分くらいのところにカホムセンがあったんで、そこで買ってきますね」
「ん? ああ……、そっか。じゃ、よろしくお願いします」
「ラジャーっす!」
と元気いっぱいにIくんは答え、電話を切りました。
カ、カホムセン……。
家庭用ホームセンター?
わたしは電話を切ったあと、ひとりで考え込んでしまいました。
なんだその略語。
これはさすがにオリジナルだよね……。
ホームセンターをそんな言い方している人聞いたことないし。
そもそも「家庭」と「ホーム」って意味がかぶってない?
「クリスマス・イヴの夜」じゃないんだから。
なんでもかんでも無理やり略するからそんな変な単語になるんだよ……。
と、ひとりで苦笑いをしていました。
そんなヘンテコリンな略語を無理やり使わなくても、
『ナフコ』とか『グッデイ』とか『コメリ』とか店の名前言う方が短くていいんじゃない?
まあ若い人はなんでも略したがるからな、と自分も当時20代というのを棚に上げて大人ぶっておりました。
ところがである。
それから2ヶ月くらい経ったころだったでしょうか。
移動中の車の中、別の年上の工事部の方と雑談をしていたときのことです。
「グッデイってこの大野城店が第一号店なんですよ」
「そうなんですか、知らなかった。グッデイってもともと大野城の会社なんですか?」
とわたしは尋ねました。
「いえ。もともとは、飯塚の方でアマチュア無線とかの部品も売ってるような店だったんですよ。デンキのカホとかいう名前で。会社名が、たしか嘉穂無線とかっていう名前だったと思ますよ」
「グッデイってそんな歴史があるんですね~。飯塚方面に嘉穂町とかありますもんね。
デンキのカホ、嘉穂無線か……へー知らなかったな~……。勉強になりま……
カホムセン!?!?!?」
「そんなにびっくりする話でしかた?」
「あ、いえ、ちょっと。あ、そうか、そういうことか、あ、いや、個人的なこと思い出しちゃってですね……アハハ……すみません」
な、なんたること……。
何にも知らなかったのはわたしの方だったのです。
Iくんがなんでそんな昔のネーミングで言ったのかは定かではありませんが、
当時はまだ「嘉穂無線」という名前の店があったのかもしれないです……。
Iくんとグッデイさんに謝らなきゃな。
窓から流れる景色を見ながらそう思ったのでした。
ぼくが断トツ1位で悪かったよ。
Iくん、まっせん。
グッデイさん、失礼しました。
今でもつい、出先でホームセンターを探すときに、
「この辺にカホムセンないかな〜」
とつい独り言言ってしまうくらい、強烈な思い出です。