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神様は同級生

お客様の古いサーバーが、引っ越しの際に壊れてしまいました。
 
保守業者さんから新機種への入れ替え提案を何度もされていたそうですが、
ずっと断っておられたそうです。
 
4月から新しいシステムに変更する計画があるらしく、
決算までのあと2ヶ月半、なんとかこのサーバーを使いたいというご要望でした。
そのシステムは、顧問税理士さんがすでに開発中とのこと。
 
万が一、現状のサーバーが壊れてしまったら、業務全般が手書きになってしまうとのことで、みなさんかなり心配されていました。
 
移転先の建物までは、車でわずか15秒。
 
バックアップも取ることができず、
『こうなったら「壊れない」という前提で運ぶしかないですね……』
という結論になり、
 
壊れました。
 
サーバー保守業者が3時間ほど復旧作業をされてありましたが、
「ちょっとむずかしいです……」という回答。
 
翌日、サーバーにも詳しい業者さんのところへ持って行きましたが、
復旧は不可。
 
業務ソフトが使えないので、しかたなく手書きの伝票で業務をされていましたが、
今までの数倍も時間がかかり、休日も出勤しないと追いつかない状況となりました。
 
「手書き業務のままで、4月まで仕事をするのは現実的に無理なので、
新しいシステムを早く準備してほしい」
ということになり、開発担当の税理士さんが大慌てとなりました。
 
試作中のソフトを使えるようにしたのはいいのですが、
未完成のため当然のごとくエラーが頻発。
 
なかなか先が見えずに、みんな頭をかかえていました。
 
 
4日後、救世主が現れます。
この窮地を救ってくれたのは、同級生のセキくんでした。
 
彼が独立してパソコン関係の仕事をしていることは知っていたんですが、
体調も悪いときがあると聞いていたので、私はどこか遠慮していたのかもしれません。
すぐにはセキくんのことを思い出さなかったのです。
 
サーバー本体をセキくんの家に持っていき、事情を説明しました。
「なるほどなるほど。あーそういう症状ならもしかしたらデータは生きているかもねー。ウインドウズを最初に読み込みするブートの部分のプログラムが壊れている感じがする。どのレベルで壊れているかによるけど、やれることはやってみる。あまり期待しないでねー」
 
私はサーバーを預けました。
このひょうひょうとした声を聞いて、なんとかしてくれるような予感を感じました。
 
翌日、日曜日。
セキくんから連絡があり、
「なんとか立ち上がったよー。やっぱり最初の立ち上げ部分のプログラムが壊れててね、復元ソフトを使ってもダメだったから、手打ちでプログラムを書き込んだら立ち上がってきた。クライアント側からこのサーバーが見れるかどうかは、現場やってみないと分からないけどねー」
 
「す、すごい!」
いや、その前にちょっと……。
サラッと言ったセリフの中に気になるフレーズがあった。
 
「手打ちでプログラム!?」
 
「うん、リカバリーのCDを入れてもダメだったからねー、手打ちでシステムパーティション作成してみたんだけど」
「そんなレベルのことができるわけ?」
「うん、でもまあ、出来る人はけっこういるよー」
「いやいや、けっこうおらんよ」
「あはは。まあ、そうね、世間的にはあんまりいないかもねー」
 
キミはいったいどんなレベルの人たちと仕事してるんだい?
 
お客様は、日曜日だけど業務が追いつかず会社で出てこられているとのことだったので、
そのまま復活したであろうサーバーを持っていきました。
徹夜続きの税理士さんも来られてました。
 
サーバーの電源を入れると、いつもの画面が表示されました。
 
みんなで拍手喝采です。
 
「神様ーー!!」
とお客様に言われましたが、
「神様は同級生です」
と説明しました。
 
税理士さんは、
「これでやっと寝れます……いやほんと助かりました」
とホッとした顔で帰っていかれました。
 
多くの人が救われた場面を目の当たりにして、
知識や技術力って人助けができるものなんだと、あらためて実感したところです。
 
仕事は人助け。
仕事をする原点を思い出させてもらったような出来事でした。

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