2009年ですから、もう10年以上前の話になります。
企業して3年くらいのときに、
わたしたちは経営コンサルをうけにいきました。
2006年にスカンピン(素寒貧)の状況で起業したわたしたち。
当時もなんとかかんとかその月暮らしでやっている状態でした。
そんな状況からもう一歩抜け出したい、
そんな思いがあったのです。
共同経営者である長尾が、
とあるルートで開拓してきたコンサルタントのもとへ向かいました。
コンサルタントと話していくうちに、
わたしたちの業種の傾向、わたしたちの強みと課題点などが見えてきます。
「ネットも大事だけど、リアルも大事だよ」
というアドバイスもいただきました。
その辺のバランスが崩れていたな~と気付き、
とても有意義な時間でした。
もうそろそろ終わりの時間です。
今日は来てよかったな~、もっとやれる気がしてきたぞ~。
と、明日からの仕事に向けて意欲が高まっていました。
最後の質問タイム
「では、最後に社長に質問です」
「あ、はい」とわたしは答えました。
「経営者にとって1番大事なことってなんでしょうか?」
「え……? 1番ですか……。なんだろう……」
「この要素は経営者にとって大事なんですよ」
わたしは通常の8倍速で頭を回転させました。
「えっと……、『人の話を聴くこと』ですかね……」
「あ~……それももちろん大事なんですけどね……」
とコンサルタントは少し顔が曇っています。
(しまった……違ったか……ガッカリな顔させちゃったな~。
社長としての素質ないな~と思われてしまっただろうな……)
「経営者に1番大事なことはですね、
『スピード』です。
すぐ行動に移せる経営者は成功します。
ですから、今日聞いたことをぜひ、すぐ行動に移してみてください。
お疲れ様でした。がんばってくださいね」
「わかりました、ありがとうございました」
帰り道、わたしは凹んでいました。
たいしたことない社長だったな、と今ごろ思われているんだろうな……。
なんだよ、「人の話を聴くこと」って。
道徳の時間かよ!
我ながら情けない答えだよな~。
他のやり手起業家たちは、
たとえ間違った答えを言ったとしても、
もっと情熱があふれ出てるような回答をするに違いない。
「経営者に1番大事なことですか?
大勢の前でスピーチできるくらい肝がすわっているってことでしょう!ガハハハ」
とか、
「経営者たるもの、数字をつくることのできる営業力と交渉力でしょう!
違いますか、コンサルさん」
って、デカイ声で答えるに決まっているんです。
なんだよ、「人の話を聴くこと」って。(2回目)
おとなしすぎるんだよ、回答が。
そんなんでよく起業しようと思ったな自分。
自分が自分につっこんできます。
隣で聞いていた長尾も恥ずかしかっただろうな……。
「こんなんがおたくの社長ですか?」
と思われた……、と思ってるだろうな……。
家に帰っても、そんな思いがグルグル回ってました。
あれから12年。
あの日のアドバイスのおかげもあり、わたしたちも成長しました。
そんな今、考えてみました。
あの問いはルール違反だったんじゃないのか?
と。
だって「経営者にとって1番大事なこと」って答えはひとつじゃないし、
時と場合により正解が真逆になったりしますからね。
たとえば、
「空気を読むこと」と「空気なんか読まないこと」、
どちらも正解になりうるシチュエーションがあります。
とういうことで、
「あの問いはルール違反でした」
以上です裁判長。
と結論づけていいのだろうか。
もう少し掘り下げて考えてみよう。
そもそも、わたしは経営者にとって1番大事なことは、
「人の話を聴くこと」と言ったわけで……。
「聴く」というのは、
相手が言葉にしなかった部分もふくめて
「この人が一番言いたいことは何だろう」
と想像することなんじゃないだろうか……。
ということは、2009年のあの日、
わたしは彼の言葉をこう聴きとらなければいけなかったのです。
『今日のコンサルをうけたばかりの経営者のあなたにとって、
一番大事なことは何ですか?』
と。
そうすれば、わたしは、
「スピード……ですかね?今日教えてもらったことをすぐ行動に移すことが大事だと思います」
と答えたかもしれないのです。
そしたら、
「それです!正解です!あなたたちの会社はまちがいなく成長しますよ」
と言っていただき、
長尾も隣で安心し、
わたしも意気揚々と帰り、
みんなが笑顔になっていたかもしれなかったんです。
結論
『相手が本当にききたいことを聴き取れなかったわたしが未熟だった』
ということである。
ということで、
「経営者にとって1番大事なことってなんでしょうか?」
の答えは、
「人の話を聴くこと」
で、もしかして正解だったのかもしれません。
ただしそう答えてしまうと、
それは2009年のときのように「間違い」になるのです。
ゆえに、
「正解」ではあるんですが、その正解をそのまま口にすると「間違い」になってしまうんですね。
その「正解」を活かして、相手の「問いの真意」を読み取った答えを考えをする必要があるのでしょう。
よってわたしは間違っていました。
(ややこしい……)