「カメラを持って、つい衝動的に旅に出ちゃいます」
とプロフィールに書ける人になりたい。
こんな思いが芽生えたのは、
「プロフィールにこんなことを書いている人がいますよ」
と、長尾から先日教えてもらったのがきっかけです。
「これだ！」
電流が走りました。
憧れました。
そのプロフィールの文言、まるごと拝借することにしました。
ということで、
予定のない休日に、そんな人になるための「練習」をしてみようと思い立ったわけです。
（練習をしている時点で、衝動的な旅をする人物にはなれない気がするのだけど）
さて、どこへ行こう。
もちろん日帰りですが、日頃から行きたい場所のストックがないのは痛い。
どこにでも行っていいと言われても、どこに行っていいか分からない。
時刻は10:30。
遠出をするとなると出発時刻もやや微妙。
日頃、車での移動ばかりなので、今日は電車で行きたい気分です。
そして今日はなんだか南の方向に行ってみたい気分がしました。
とりあえず、カメラと最低限の荷物を持って最寄りのJR駅へ。
電車が来るまで約30分。
どこに行こうかまだ決まってません。
駅の待合室で考えることにしました。
せめて旅っぽい気分を味わうために、
「県外に行く」というルールを自分に課すことにしました。
非日常を味わうために。
福岡県の南隣の県は、熊本県。
ここ、羽犬塚駅から乗ると終点が大牟田駅か荒尾駅。
それからさらに南に行く場合は乗り換えになるようです。
とりあえず電車に乗って、南に向かいながら考えよう。
（切符はとりあえず終点の大牟田駅まで買っておくことにしました）
昔、博多に通勤していた頃に何百回と利用したことのある勝手知ったるJR羽犬塚駅です。
体がホームまでの道を覚えています。
いろいろ考え事をしながらでも、ちゃんといつものベンチに座ってました。
あと10分くらいで電車が到着します。
今日の目的地は「熊本駅」にしておこうと考えがまとまりました。
もっと未知の世界に行ってみたい気もするけど、それはまた今度。
電車が来ました。
いつものように扉が開き、いつものように空いている席を探します。
さて、いよいよ始まる衝動的な旅です。
いつものように空席へ向かおうとするそのとき、大きな違和感に気が付きました。
「あ！！ちょっと待った！いつも通りじゃダメだ……ろ……」
急いで振り返りましたが、車両の扉は今閉じられたところでした。
わたしはひとり天を仰ぎます。
私を乗せた列車は走り出しました。
北へと向かって。
何百回と繰り返した行動は、無意識にやってしまう。
今日はいつもと逆のホームの電車の乗らなきゃいけなかったんです。
1時間以上考えていた南への旅のイメージは、全部無駄になりました。
計画は全部ゼロに戻ったわけです。
これこそが、衝動的な旅の醍醐味なのでしょうか……。
しかもこの電車、鳥栖駅で止まる。
そこから乗り換えないと博多駅にも行けない。
旅気分を味わうために、今日は県外に出るのがルールです。
北へ向かうことになった今、
県外に行くためには、山口県まで行かないといけないことになります。
結構遠くないか……？
自分が今日、山口県に降り立つ姿をまったく想像できないでいるんだが。
調べてみると、門司港駅まで軽く2時間以上はかかる。
どこかの駅から特急や新幹線に乗りかえた方がいいかもしれない。
やれやれ。
村上春樹の小説の主人公にでもなった気分でつぶやきました。
終点の鳥栖駅で降りました。
時刻を見ると、11:30。
まだまだこれから2時間くらいは電車の中。
先は長い。
おなかすいた。
なんか食べよう。
ん？
あ！
そうか！
身近にいる犯人に気が付いたコナンくんの気持ちを味わいました。
「チェックメイト」と藤原竜也のようにつぶやきました。
わたしが今日、唯一自分に課したルールは「県外」に行くこと。
わたしはもうゴールにいたのです。
鳥栖。
ここは佐賀県。
「福岡県外」です。
鳥栖市は、普段、仕事をしている範囲内ということもあり、
身近すぎて県外のイメージがまったくありませんでした。
鳥栖駅の改札を出て、県外の地に降り立ちました。
そこには非日常どころか、見慣れた風景が広がっていました。
でも、なぜかとても新鮮でした。
もうこれは、衝動的な旅の本番のひとつだと呼んでもいいのかもしれません。
衝動的な旅とは、非日常を探さなくても、
日常の中にも転がっているみたいです。